最近注目の国際バカロレア教育(以下IB)。関東でいち早く国際バカロレアを導入された玉川学園で行われた「バカロレア教育フォーラム」に参加してきました。実際に授業見学もさせていただき、とても充実した、学びの多い時間でした。
以前にもご紹介しましたが、IBはジュネーブが本部で、世界を舞台に活躍できる人材を育成するための国際的な教育プログラムです。なかでもディプロマプログラム(以下DP)は、16歳から19才までを対象としたカリキュラムと試験で、世界トップレベルの大学をはじめ、国際的に通用する大学入試資格(IB資格)が与えられます。世界各大学へ選抜をしてもらえるパスポート的な役割ですね。
現在のIB導入は世界147か国、認定校約4000校(2014.11)に急増しています。日本ではまだ27校のみ。15年からは日本語での授業によるDPも認められることになったので、大学入試にもIBのスコアを取り入れるなど、広がり始めているようです。
IB教育の特徴って?
語学力のみでなく、コミュニケーション能力や異文化を需要する力、論理的思考力、課題発見力などが身につくようになっているのがIBディプロマ課程。グローバル人材を育成するためのカリキュラムとして評価されています。
こちらが、IBの学習者像 (The IB Lerner Profile):
- 探求するひと (Inquirers)
- 知識のあるひと (Knowledgeable)
- 考えるひと (Thinkers)
- コミュニケーションができるひと (Communicators)
- 信念をもつひと (Principles)
- 心を開くひと (Open-minded)
- 思いやりのあるひと (Caring)
- 挑戦するひと (Risk-takers)
- バランスのとれたひと (Balanced)
- 振り返りができるひと (Reflective)
これらの10の属性を、どれかではなく、全てを兼ね備えることが求められます。
玉川学園長曰く、「IBは慣れ親しんだ日本の学びのスタイルとは違い、単に書き写すのではなく、文化背景の違った人と一緒に学んだり、英語での学習したり、自分の意見を積極的に伝えクラス全体に貢献することが求められます。これらは大学に入ってからスタートするのでは遅い。」と仰っていました。
実際のIB授業って?
「理科」「デザイン」「TOK(Theory of Knowledge)」「英語」の授業を見学しました。日本の授業スタイルとは違って、基本的に教科書はありません。全てはグループディスカッションベースで行われます。英語で教えて、生徒は英語で応えます。競争もありません。
授業では、先生から次から次へと飛んでくる質問に対して、次々に生徒が指名され、論理的に自分の意見をまとめて即発言していきます。日本人は発言しない・・プレゼンテーションが終わったあとの質問やディスカッションでよくある話ですが、この教育スタイルが日本で広がっていけば、将来状況は変わってくるかも?!(苦笑)
とにかく、現実社会で起きていることをどう捉えるかを考えさせ、先生やクラスメートとの違った考え方に直面しながら多面的に考え、学び、知識を蓄積していく感じでした。
ちなみに「理科の授業」では、電気のない島での再生可能エネルギー活用がテーマでした。生徒一人ひとりが科学者となり、地域の資源を活用した再生可能エネルギーの最適なオプションをグループで議論し提案します。Community Cardsという各地域の詳細が記載されたもの、それからRenewable energy fact cardsという再生可能エネルギーの種類(供給量、資源、環境への影響等)が配られます。グループでは、リーダー、タイムキーパー、スピーカー、記録に分けられて進められていました。冒頭では、何故電気がないのか?どうやって生きていくのか?などの根本的な質問も投げかけられることで、あらゆる視点で考える力や方法を身につけているようでした。
「TOK(Theory of Knowledge)」、これはDPの中核となる授業ですね。
人々がどうやって知識を得るか、また何を根拠に真実かそうでないかを知り得るかを追求する哲学の分野です。テクノロジーの発達に伴い、多くのひとにとっては仮想現実のほうが魅力的になって現実からはなれる傾向があるとのこと。現実を向き合うことで、人権や地球温暖化など、さまざまな課題に積極的に取り組むことを目指しているのです。
授業では、最新ニュースをウェブ上で見せる→経済・教育・社会・心理学から興味のある記事を選ぶ→各テーマについてグループで議論→提案を発表が大枠の流れ。記述されたニュースの前提にあるもの、背後にある意味などを分析したり、さまざまな異なる考えや認識について議論しながら、課題を明確にして、グループでの発表をまとめていました。ちなみに、私が覗いたグループディスカッションでは、8-9割女子が話してました(笑)。
なぜ、国際バカロレアが必要なのか?
IB認定校を日本で広げるうえで期待していることは、大きく以下3つだそうです。
1. グローバル人材の育成:
中高生対象の調査から、日本では海外に留学を希望しない生徒の割合が他国より高く、「社会のことは複雑で私は関与したくない」という内向きの生徒の割合が多いとか。インタラクティブな授業のIB教育を受けた学生は新しい考えや選択肢も広がり、海外へ行きたいという生徒も増えるのかもしれません。
2.国内外への進路の多様化:
2つめは、国際的通用性。英国では、英国入試機構が大学(学部)ごとに出必要なIBスコアの目安が作成されているとか。米国では、SATの共通試験の成績などに加えて、各大学によってIBの履修をプラスとして推奨。ハーバード大学をはじめとした有名大学でもIB生の合格率は他と比較して3-13%ポイント高いそうです。
3.大学の国際化・活性化:
3つめは、IB認定校が増えることで、海外からの優れた留学生が集まり、大学の国際化や活性化に繋がることが期待される点です。1年前はIBを活用して大学入試をしたところは10校程だったのが、現在では慶応大、筑波大、東京大などを含め50校以上とかなり広がってきているそうです。
今回のフォーラム、やはり生の授業を見学できたのはとても有意義でした。人がもつ違いを違いとして、価値観の重要性をディスカッションしながら学び活用していく・・。世界で活躍するためだけでなく、国内でもあらゆる価値観の違うひととコミュニケーションをとり、自分の意見をきちんと伝えることはとても大切なことです。親としてもあらゆるテーマに対応できる力を高めていかなければと思いました。