国際バカロレアセミナー@a.school part 1

本郷にある探究型スクールa.schoolにて、国際バカロレアに関する情報を発信していらっしゃるIBJPN.comの山内 学さんのお話を伺ってきました。タイトルは、「今、国際バカロレアが求められる理由」。日曜日の午前中にも関わらず、30名ほどの意識が高い保護者が集っていらっしゃいました。

山内さんの娘さんは国際バカロレア(以下、IB)教育6年目(PYP)だそう。娘さんがIB校に通い出した6年前は情報がなく、どんなプログラムなのかよくわからない部分が多かった為、実際のカリキュラムや内容を伝える為にIBJPN.comを立ち上げられたそうです。

http://ibjpn.com/

今、IBが求められる理由

「遠野物語を読んで、日本人とは何かを考察せよ」

とある大手企業の幹部の研修で出された問題です。実際に物語を読んで、現地に赴いてレポートを書かせるのだそうです。一昔前は、MBAがもてはやされ、MBA的な企業研修が多かったようですが、現在はリベラルアーツ系が注目されているとのこと。某雑誌のアンケートでは、経営者の約8割強が「教養は成果を上げる上で必要」と答えているそうで、企業の求める人材が変わりつつあることがうかがい知れます。

実際、経団連の調査で、新規採用にあたって重要視しているポイント上位は、コミュニケーション力、主体性、チャレンジ精神、協調性、誠実性です。専門性、語学力、成績、出身校などは10位以下。このような調査結果を見ても、今、求められているのは「教養」と「人間力」と言えるのではないかと、山内さんはおっしゃっていました。

このような背景もあり、最近注目を集めているのが、リベラルアーツの枠組みで全人教育を行っているIB教育です。

入試が変わる

2020年に大学入試改革が行われる予定です。センター試験を廃止、到達度テスト(複数回受験可)を採用し、1点刻みではなく、大きな区分でランク分けするように。テスト一発から多次元評価へ(志望書、面接、論文、活動実績)になるのですが、AO入試と違うのは、学力不問にするわけではない、というところ。

この改革で国が養成したいと考えている新しい学力は、課題の発見・解決に向け、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ力、ということで、まさにIB型の学力なのですね。

大学側としても、養成したい新しい学力にマッチし、大学で求められる学習姿勢が身についているIBディプロマ取得者受け入れを拡大していく見込み、とのことです。

企業としても、国際的に通用する全人教育を受けた学生は、欲しい人材に一致するわけですね。

ここで、IBを紹介するYouTubeの動画を見せて頂きました。IBが求める人物像が説明されています。

IBのカリキュラム

ご存じの方も多いと思いますが、IBのプログラムは、日本の小学校に相当するPYP、中学校に相当するMYP、高校に相当するDPの3つに分かれています。

PYPは、競争や制限もなく、ファンキーさを許容してくれるのだとか。 小さな研究者を育てる為に、教科書もなく、子ども達が自ら調べて学びを進めるスタイル。算数、国語のような教科書を使って覚えるような学習は、家庭学習が中心になるそうです。

写真は、山内さんの娘さんの学校のプリントです。教科書ではなく、その場に適したプリントなどを使って授業を進めるのですね。

print

教科の概念がなかったPYPとは違い、MYPには語学、社会、数学などの強化があります。とは言え、「1300年当時の商人になって、アランデル城を売ってみよう。チラシと詳しい説明文を書こう」というような課題が出されるなど、日本の中学校の授業スタイルとはずいぶん違う印象です。

もちろん絶対的な答えは存在しないので、答えが違って当たり前な状況をどう評価するか、という訓練にもなりますね。

IBプログラム最後のDPには、語学、社会、科学、数学、芸術などの教科があり、それ以外にも課題論文、知の理論、CAS (Creativity, Active, Service)などが課されます。

例えば、DP社会の問題には、「出生増進政策を一つ例に挙げて、それが効果的だったかエッセイを書こう」というようなものがあるそう。出生増進政策を取っている国を知り、その結果を知らないと、全く何も書けないわけですね・・・。このように、詰め込み式で覚える勉強ではなく、学んだことを自分の中で咀嚼することで、仮説を立てたり、分析をする力も養われるようです。

DPの歴史の最終試験問題「マイノリティの迫害を引き起こす一番の要因は何か。実例をもって説明せよ。」も、全く同じですね。年号や歴史的事実を覚えるスタイルとは正反対です。

ちなみに、IB生の米国難関大学(ハーバード、プリンストン、スタンフォードなど)の合格率は2倍にもなるそうですよ。

IBの注意点

ここまで聞くと「IBを受けさせたい!」と思う方も多いと思いますが、山内さんはIBの注意点として下記のようなことを上げていらっしゃいました。

‐大学によって、IB生に対する細かい科目設定がある為、高1のうちに大学進学を見据えた科目選びをしておく必要がある。

‐柔軟なカリキュラムの為、教師の力量によって大きな違いがある。

‐2割の生徒がDP資格が取れない(DPは勉強面でもとてもハードなのだそうです)

‐高い授業料(私立、インターがほとんどの為)

‐日本ではIB認定校、IB入試大学の選択肢が少ない

また、子どもの性格によっても、日本の学校が良いのか、IBが良いのかは全然違う、とおっしゃっていました。先生の話を聞いて、覚えるスタイルが好きな子にはIBは向かないし、子どもの個性を見極める必要がありますね、とのことです。

充実のセミナーの第2部では、現在横浜インターナショナルスクールでDP取得に向けて勉強されいるSさんが登場されて、生の声を聞かせてくださいました。小学校は公立に通っていたというSさんが、どのようにIB校に入学したかなど、興味深いお話が沢山!第2部の模様は次回のCURIO Japanブログでご紹介します!

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