世界の子育て/アイスランド編 (part 2)

前回の記事に続き、アイスランドでの子育てインタビューpart 2です。
二人の男の子をレイキャビークで育てている、Hさんのお話をご紹介します。

Q:日本とアイスランドを比較して、幼稚園・学校教育における指導者や制度の違いはありますか?

幼稚園に関していうと、日本のようなきめ細やかな生活指導・教育的な指導(ひらがなの読みを教わるとか)はありません。こちらの幼稚園は保育園も兼ねていて、親がいない間に子ども達で遊ぶ場です。連絡帳も出席ノートもありませんので、子どもの日々の園での生活はよくわからないところがあります。以前、子どもの服の袖に血がついていたことがあって、先生に聞いてみたら、「見てなかったのでわかりません」とのこと。多分だれかの鼻血がついてしまったとかなのだと思うのですが、そういうところは杜撰だなーと思います。

教育制度に関しては、幼稚園・保育園の区別がなく1歳から5歳までの子はレイクスコーリ(直訳すると遊びの学校)に入ります。6歳から15歳までが義務教育で、16歳から20歳まではメンタスコーリという高校に行きます。大学は4年制です。

義務教育では4年生から英語を学び(1年生からスタートする学校もある)、7年生からドイツ語、高校でさらにもう1つ外国語を学びます(ドイツ語とか)。ただし、アイスランド語以外の言語が母国語の学生は、プレースメントテストを受けることでこの授業を免除されます。日本語もこの母国語カテゴリに認められたので、もし長男が今後日本語学習をもっとがんばり、このプレースメントテストに合格すれば、高校では第3外国語を学ばなくて済むことになります。

費用は、小学校と中学校は給食代のみ、高校は12000kr(約10700円)/年。大学はレイキャビックだとアイスランド大学(国立)かレイキャビック大学(私立)しかなく、進学する人は大多数がアイスランド大学に進みます。授業料は30000kr(約26700円)/1学期です。

勉強以外の面だと、幼稚園と小学校では子ども達は防水スーツを学校に常備し、雨でも雪でも外で遊ぶよう奨励されます。

Hさんのお子さんたちが通っている学校の校庭

Hさんのお子さんたちが通っている学校の校庭

Q:幼稚園・学校外における環境の違いはありますか?

幼稚園は5時に閉まります。小学校の授業は2時半に終わり、その後「放課後教室」という、学校内で先生が子どもたちを見てくれる時間が5時まであります(有料)。ということは、親は5時までにお迎えにいかねばならないということで、それにあわせて仕事をしています。重役の男性も会議が時間通りに終わらなかった時に、「あ、子どもを迎えに行く時間だから、ちょっともう失礼するね」と言って帰ってしまったほどです。ベビーシッターの組織だった会社はなく、たいてい家族の誰かに頼むか(夫の妹とか)、親戚の子に頼むか(中学生~大学生、時給で800円くらい)、子どもの友だちの親に頼むかです。

Q:親のしつけ、子育て・教育における行動及び考え方の違いはありますか?

しつけ…日本に比べると「常識」とか「不文律」がほとんどないので、しつけという概念もないかもしれません。子どもに何を教えていくかは、とくに社会の規定はなく、親次第です。食事のマナーも、手で食べるのはもちろんNGですが、細かいフォークとナイフの持ち方など、別にできなくてもどうでもいい、といったところがあります。「挨拶をきちんとする」というのも、特に徹底していないような…。わりと野放図です。しかし「行儀」という概念もないので、「行儀が悪い」という概念もありません。

子育て…ママ友という言葉がないです。休日は、子どもが遊びたいという子の親に約束を取り付け、その子の家まで送っていきますが、親は玄関で子どもを引き渡した後帰ります。子どもを通じて親の友だちの輪ができるということはなく、子どもは子ども、親は親で各自独立した友人関係を保っています。なので、自分の子どもを同じ環境の子ども(同じクラスの子とか)と比べる機会がほとんどなく、育児の苦労や相談は自分の家族や友人などにすることになります。

学問への熱心さ…全体的にあまり熱心ではありません。というか、子どもが毎日元気で楽しそうにしていればいいかな、という感じで、算数ができなくても、国語が苦手でも、本人が毎日楽しく過ごしていればそれでいいのでは。もう少し上の学校に行けば子どもの学業について焦りや期待も出てくるのかもしれませんが、小学校2年生だとまだ身に迫っている親は少ないようです。

発表会の模様

発表会の模様

Q:将来、お子様にはどのような大人になって欲しいと思いますか?また、その為に行っていることはありますか?

スマートで、優しい(人の気持ちを想像できる)子になってほしいと思います。そのために行っていることといえば、本人が何かに好奇心を示すときに、その機会を逃さず知識を広げるようにすることぐらいです。戦闘系のゲームが好きになったら博物館で実際の武器を見て歴史について考えたりとか、日常会話でニュースの話を織り込むとか。優しい子に育てるためには、親が人に優しくする姿を見せるしかないのかな・・・と思っています。

Q:海外に住んでいるからこそ、子育て・教育で気をつけていることがあれば教えて下さい。

寝る前に日本語の本の読み聞かせをしています。家の中の会話は日本語です。アイスランド語で何かを言ったときには、必ず日本語で返しています。食事のマナーや日常生活のマナーは日本のものを教えるようにしています。

Q:日本の子どもとアイスランドの子どもを見て、大きく違うと感じる点があったら教えて下さい。

アイスランドの子どもは自己主張が激しく、好き嫌いがはっきりしていて、いやなものをいやと誰にでもストレートに言います。創造性が豊かで独立心が旺盛です。「人にどう見られるか」より、「自分が何をしたいか」を優先します。

アイスランドに関して、ほとんど知識がなかった私ですが、Hさんのアンケートを拝見して、とても興味が湧きました!子育てに関して、羨ましい部分がたくさんありますね。大人も子どもも、「自分の生活」を最優先して、のびのびと生活している様子が目に浮かぶようです。子どもがもう少し大きくなったら、一緒に行ってみたいな、アイスランド!

アンケートの中に出てきた男女格差に関しては、世界経済フォーラム発行の「国際男女格差レポート2013」に詳しく載っていますので、ご興味のある方はぜひご覧下さい。アイスランドは5年連続1位なのだそうです。ちなみに日本は2013年は105位・・・。

以上、世界の子育てインタビュー、アイスランド編でした。Hさん、ご協力ありがとうございました♪

世界の子育て/アイルランド編 part 1はこちら

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