これから求められる真のグローバル教育とは?

先日、御茶ノ水で開催された私塾会フォーラムに参加してきました。学習塾のみならず、私立高校の先生方も参加されていて、大変は盛況でした。今回のフォーラムのテーマは「日本の教育再生は民間から」だったのですが、その中でも“グローバル教育”、“グローバル人材”が大きなキーワードになっていました。今回は、フォーラムの中で最も聞きたかった、ISAK代表理事の小林りんさんと、AIC代表の桑原さんの特別対談についてまとめたいと思います。

ISAKとAIC

ISAKは、先日「カンブリア宮殿」でも特集されていましたし、メディアの露出が大変多いので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?“世界を変革するリーダーを育てる”為の学校として、2014年に軽井沢に誕生した高校です。

ISAK

一方のAICは、Auckland International Colleageとして、2003年にニュージーランドのオークランドに開校した高校で、日本の私立高校に相当します。日本を初め、ニュージーランド、イギリス、アメリカ、韓国、ベトナム、中国など、14ヶ国から生徒が集まって学んでいるそうです。AICも“各分野でグローバルリーダーシップをとれる人材の育成”を理念に掲げて、国際バカロレアのカリキュラムを教えています。

同じような理念を掲げる両校は、寮制という体制をとって学校を運営されています。全寮制にした理由は、日々の生活を通じて、友人たちとぶつかり合いながら、多様性を理解して欲しいという想いからだそうです。確かに寝食をともにすることによって、より深いレベルで異文化や多様性を理解できるようになりますね。また、両校とも寮ではハウス制を導入しているらしく、ハウスごとで競わせるのだそう。こちらも、座学でリーダーシップを学ぶのではなく、日々の生活から学んで欲しいという想いでスタートしたとのことでした。

ISAKは今年始まったばかりですが、11年の歴史があるAICでは、すでに卒業生が何百名もいます。今までの卒業生達の進路先には名だたる大学名がずらり。2014年は107名の卒業生がいましたが、オックスフォード大学に5名、ケンブリッジ大学に2名、ハーバード大学、MITにそれぞれ1名ずつ入学するなど、有名大学に進む生徒が多いようです。オックスフォード大学にはニュージーランド全体で5名しか合格していないにも関わらず、内4名がAICの生徒ということでした。

グローバルスタンダードから見る日本の生徒達

小林さん、桑原さんが口を揃えておっしゃっていたのは、「英語はとっても大事ですが、ツールでしかない」ということでした。また、英語はとても得意だけど、自国のことを何もしない人は「Banana」と呼ばれるそうです。見た目は黄色(日本人)だけど、中身は白人という意味で、侮辱的な意味合いで使われます。近年グローバル教育、グローバル人材という言葉がよく聞かれるようになりましたが、「Banana」が増えるのは困りますね・・・。お二人とも、日本の文化や習慣なども生徒達には教えているとおっしゃっていました。

また、日本国内での「優秀」は、狭い世界での「優秀」であって、世界で通用しないことも多いのだとか。「世界で一番大きな問題は何か?」を問われた時、日本では「わからない」とか、「塾で習っていないので知らない」と答える生徒が多い一方、海外の優秀な生徒はきちんと自分で問題設定ができる、とのこと。デスクスマートではない、情熱やキラリと光るものを持っている生徒に入学して欲しい、とお二人ともおっしゃっていました。

話は生徒だけでなく、保護者にも及んだのですが、AICの桑原さん曰く「日本の保護者はdomesticな考え方をお持ちの方が多いと思います。子どもの食事や勉強について、先生に直接お願いをしてくるのは日本の保護者だけです。個人的には、保護者の意識改革も必要だと感じています」とのことです。一方のISAKでは、入学試験の一環として保護者にもエッセイをお願いしているのだとか(日本語でも可能)。ISAKのミッションやビジョンに共感して頂いてる保護者が大変多く、保護者への説明会で何か質問が何か尋ねたところ、”What can we do for you?”と言われたそうです。素敵なエピソードですね。

これからの展開

AICは2014年12月に首都圏で初めてAICの入学試験を実施するとのこと。また、幼少時から一気通貫で英語+グローバルリーダーシップ教育ができるよう、幼稚園(AIC付属幼稚舎)、小学生向け英語学校(AIC Kids)、中高一貫校(AICJ中学・高等学校)の展開を強化していくそうです。もともろ広島を拠点に展開していらっしゃるのですが、今後は全国に広がっていくのでしょうか。東京でもかなりニーズがありそうですね。

AIC

一方のISAKは現在、UWCへの加盟を目指しているのだそうです。UWCとは、非営利の国際学校の集合体で、全世界で14校が加盟していて、優秀な学生に奨学金を与えて各国の学校に派遣しているのだとか。加盟するには様々な審査をクリアする必要があり、日本の学校はまだ1校もUWCに加盟できていないそうです。「私が倒れたりしたらISAKはどうなるんだ、というお声を頂くことがあるのですが、UWCに加盟できれば、毎年優秀な生徒が奨学金をもらってISAKに入学してくれるようになります。継続的に世界中から優秀な学生に入って頂く為にも、UWCへの加盟をぜひ実現させたい」とおっしゃっていました。小林さん自身も、高校の時にUWCに加盟しているカナダの高校に留学されたのだそうです。

UWC

今回の対談は、1時間という短い間でしたが、大変中身の濃いお話を伺うことが出来ました。お二人の対談の後に参加したパネルディスカッションには、渋谷高校校長や、文科省の方も参加されていたのですが、そこでもやはりグローバル教育・グローバル人材が大きなキーワードになっていて、時代の波を感じました。

This entry was posted in event report. Bookmark the permalink.