いま話題の国際バカロレア教育について、こんなタイトルの本を図書館で見つけたので読んでみました。
国際バカロレア教育について、教育者側からの意見だけではなく、先生との子どもの具体的なやりとりや、実際に学んだ子どもたちがこの教育を受けたきっかけや感想の声も収録されています。
ちなみに著者は、東京インターナショナルスクールの代表、国際バカロレア機構アジア太平洋地区の理事として、国際教育に知見をもつ坪谷さん。2000年には軽度の発達障がいなどを抱える子どもたちのための学校「NPOインターナショナルセカンダリースクール」を設立、さらに2013年には「グローバル人材研究所」を設立。国際バカロレアのメソッドを取り入れた、英語による探究型学習の学童保育・幼児園を手がけはじめられているとか。教育について幅広い経験と知見がある方ですね。
本当の世界で生きるチカラとは?
世界の競争に勝ち抜くことが意味をなさない時代
著者が考えるグローバル人材像は、『常に自己成長を続け、世の中に貢献することを目標にする人材』
本当のグローバル人材とは、“世界で暮らす人々の多様性を理解、尊重し、より平和で豊かな世界を創造することに貢献できるひと”“そのために生涯成長をし続けることやめない人”と仰っています。すばらしい考えですね。でもこの捉え方に違和感を持つ人も多いそうです。それらの多くは“グローバル人材とは、世界規模での競争に勝てる人材”と考えているそうです。
この2つの考え、「世の中に貢献する」「世界の競争に勝つ」は、どちらを前提とするかで行動に大きな違いをもたらすことを、分かりやすく説明してくれていました。
例として、京都議定書のCO2の削減。後者の「世界の競争に勝つ」を前提とすると、できるだけ負担が少ないようにして自国の競争力に寄与しようとする。でもこれでは温暖化がいま以上に進んでしまうリスクにさらされてしますよね。だからこそ必要なのが「世の中に貢献する」という考えや視点となるのです。
世界に貢献することを目標にできる人、単なる勝ち負けの世界ではなく…日本ではこのような視点はまだ遅れているかもしれません。
本当の多様性とはどういうことなのか?
人種や国籍が多様であるという環境は、ダイバーシティのひとつであることには違いはありません。でも、ダイバーシティの本質はそれと全く違うのだと坪谷さんは言います。
そもそも人は容貌、価値観、志向、行動スタイル、能力など、それぞれが異なっています。肌の色や育った国だけに拠らないのが本当の多様性であり、だからこそ『一人ひとりの個性に目を向ける』ことが大切なのです。
それぞれが自分と相手の強みを知り、どうすれば社会に貢献できるのかということを理解していれば、お互いがサポートし、強みを差し出し合いながら進んでいくことができる。そうすることで、自分ひとりで取り組むよりも、ずっと大きく価値あることを成し遂げられるようになる。
一人ひとりがこれを意識することで、チームワーク力は最大限になりそうですね。
国際バカロレア教育のゴール
皆さんにとっての国際バカロレア教育のイメージはどのようなものですか?
どちらかというと、「グローバルエリート教育」という世界の一流大学入学と言った側面が強い方が多いのかもしれません。でも国際バカロレア教育のゴールはそこではないのです。学力だけでなく、人間力を育むための幅広い知識と教養を身につけることをめざしています。
たとえば、幼稚園や小学生プログラムにおける下記6つのテーマの上位概念はこちら。
- 自分自身について —–Who we are
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私たちが置かれている場所や時代について—–Where we are in place and time
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自己の表現方法について—–How we express ourselves
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すべてのことはどのように機能しているか—–How the world works
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社会を体系付ける方法について—–How we organize ourselves
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地球に共存する術について—–Sharing the planet
これらのテーマを探求していくのに必要な知識領域として、いわゆる国語とか算数などの教科と組み合わせた学習ユニットがあるということ。子を育てている親として、このような教養が具体化されていることも含め、とても興味深いと思いました。
また、まずは親としてもっと幅広い知識をもち、日々の子どもとのコミュニケーションの中で多様性をサポートしていくためにも、常に周囲の情報に耳をかたむけながら私自身が勉強していかねばと、改めて感じました。
ご興味あれば、ぜひ読んでみてください。