先日、拓殖大学で開催された「グローバル教育の集い“日本の未来を切り拓くグローバル人材育成の本質に迫る”」というタイトルのセミナーに参加して来ました。参加者の約
3分の2が学校(小中高)の現役教員だった為、教員でない私はちょっと場違いな感じになるかと思ったら、皆さんとてもオープンマインドで、色々なディスカッションが出来て大変勉強になりました。当日のセミナー登壇者3名のお話のまとめと、その後のワークショップについて紹介したいと思います。
これからのグローバル人材に求められる力とは?
まず最初に、目白大学教授の多田先生が登壇されたのですが、先生のお話はとても奥深く、興味深いものでした。グローバル社会の中で、「変動性」、「不確実性」、「複雑性」、「曖昧性」はますます高まっているため、偏差値を物差しにするような勉強は、役に立たなくなるとおっしゃっていました。
世界の教育トレンドは、「インクルーシヴ教育」、「地球市民教育の促進」、「社会の複雑化に対応する教育(異質の共生社会に対応できる資質・能力・技術の育成)」となっている中、日本はまだまだ遅れを取っている為、これから大きく変わるべき、とのお話しでした。
グローバル教育というと、英語を強化しようという話しになりがちですが、多田先生の話の中には英語教育の話しは最後まで出てきませんでした。小手先のスキルではなく、「理解の不可能性への対処」と、「多様性への対応」ができるような教育が必要と述べられた上で、ではそのような教育にはどんなカリキュラムや授業が必要なのかを研究する必要がある、とも述べられました。どのように実際のクラスに落とし込んでいくか、私自身もこれは大きな課題だと感じるとともに、政府や学校や社会が一緒になって知恵を絞る必要があると思いました。
企業で求められる人材とは
続いて、(株)ネクストエデュケーションシンクの斉藤さんのお話。斉藤さんのお話しは、企業が求めるグローバル人材のお話だったので、学校の先生方からは「企業が求める人材を作るのが学校なのか?」という声もちらほらありましたが、企業が最も重視しているスキルに関するアンケートは興味深かったです。経団連が2014年1月に発表した新卒採用に関するアンケートなのですが、企業が学生に求めるスキルの上位5つは学校の勉強にはほとんど関係ないのです。1位:コミュニケーション能力、2位:主体性、3位:チャレンジ精神、4位:協調性、5位:誠実性、という結果で、学業成績や出身校は17位、18位でした。
上位5つは、社会経験によって培われるものがほとんどです。偏差値の高い学校に入学させて、大きな企業に就職させたいという親が多く、テストの結果に重きを置く傾向が高い中、実際に社会で必要となるのは偏差値ではないようです、と話されていました。
グローバル人材とは?
最後は元JICA職員の松岡さんのお話しでした。途上国を中心に、様々な国で仕事をされた経験から、日本人のアイデンティティーを持ちながら、海外と協力していくことの重要性を話されていました。松岡さんのプレゼン時間が短かった為、あまり細かいお話しは伺えませんでしたが、松岡さんのグローバル人材の定義を、こちらに記載しておきます。
「グローバル人災とは、主体的な地球市民として、互いの多様性を理解・尊重・活用しながら、「自立」し、他者と「協働」し、新しい価値を共に創造できる人材」
ワークショップ
3名のお話しを聞いた後は、2つのグループに分かれてディスカッションをしました。1つ目のグループは企業が求めるグローバル人材により興味がある人たち、2つ目のグループは学校現場でのグローバル教育に興味がある人たちで、私は2つ目のグループに参加しました。
2つ目のグループには20名弱の方が参加。その中で4~5名ほどの小グループに分けられ、ディスカッション形式で進められました。私のテーブルは、1名が公立小学校教員、1名が国立大学付属高校教員、私含む2名は非教員という構成だったので、バランス的には良かったと思います。
グローバル教育がテーマとは言え、海外の話しなどはほとんど出ず、いかに一人ひとりを尊重した授業が出来るか、対話型授業にするにはどうすれば良いか、という話が中心でした。今までの詰め込み型授業では、生徒は伸びないし、これからの時代を生き抜いて行けない。もっとinclusiveでdiverseな教育を、と皆さんが思われていて、“学校の先生方も同じような危機意識をお持ちなのだな”、と感じました。ちなみに先生達は、「親御さんでそういう考え方を持つ方(=私)がいらっしゃるのは、とても珍しいと同時に心強いです」とおっしゃっていました。個人的には、多くの親が同じような危機意識を持っていると思っているのですが、そうでもないのでしょうか・・・。
同じテーブルの小学校教員が勤務されている文京区の某小学校では、1年ほど前から対話型授業を取り入れているそうなのですが、子ども達の変化には目ざましいものがあるとおっしゃっていました。それまではテストで良い点数を取る子ども達がメインで話して、それ以外の子ども達は聞いていることが多かったらしいのですが、対話型授業ではどんな子どもでも発言ができる、とのこと。とは言え、生徒の親の中には、「そんなことよりもテストの点が上がる勉強を教えて欲しい」とリクエストする方もいるそうで、「親御さん達の意識は、やっぱり受験とかテストの結果に向いているので、なかなか難しいです」とおっしゃっていました。親の意識改革も同時に必要になってくるようです。
最後に
かなり本格的な教育セミナーで、親として参加している人はほとんど居ませんでしたが、大変勉強になる内容でした。これからの時代に、子どもにどんな人間になって欲しいのか、私自身もしっかり考える必要性を感じるとともに、学校や地域と協力してできることはないのか、模索していきたいと思いました。
最後に、多田先生が何度か言及されていた「対話型教育」について、先生本人が書かれた本がありますので、ご紹介しておきます。