なんで英語やるの?

今や子供から大人まで、年齢を問わない習い事としての地位を確保している英語。このブログを読んでいらっしゃる方は、どこかの段階で英語を勉強してきたことでしょうし、今も仕事で使われている方も多いかもしれません。
それくらい日本人にとって当たり前の存在になった“英語”、今日はそんな英語に関するブックレビューをお届けします。今から30年以上も前の本ですが、内容は決して古くなく、今でも読まれてしかるべき内容と示唆に富んでいる本です。(すでに絶版となっていますが、出品者から購入可能)

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そもそも私たちはなぜ英語を勉強するのか?

日本人はほぼ100%の人が義務教育内で英語を勉強していると思います。
そんな日本人読者に向けて、この本がなげかけているのは「なぜ英語をやるのか?」というシンプルな質問です。

シンプルだけど難しい。考えさせるとても良い問いかけだと思いました。

皆さんも「なぜ英語を勉強するのか?」例えば自分の子どもに聞かれた場合、なんて答えますか?「受験に必要だから?」「将来役に立つから?」どちらも正しい答えだとは思いますが、自分がその答えをもらったとして、、、納得できるでしょうか?

英語の最大公約数

これほどに当たり前になった英語教育であるにも関わらず、英語を勉強する理由がきちんと消化できていないというのは、多くの人にとって英語が「中学生になって追加された1つの教科」という位置づけにすぎないからだと思います。言い換えると、教科の1つであるため、「日本語との置き換え」による和訳や文法が主流になってしまい、人とコミュニケートするための言語という意味合いが薄まってしまったといえるかもしれません。

そのため著者は、日本の英語教育からは「世界のどの人が英語を学ぶにしても必ず守らなければならないルール」が抜け落ちてしまったと考えています。そしてそれを「英語の最大公約数」と呼んで紹介しています。

【英語の最大公約数】
1.英語は世界のあらゆる言葉と対等である
2.英語は音を重視する聴覚型言語
3.腹式呼吸で発生し発音する
4.自他を明快に分ける思考を土台にしている

著者は、2歳から12歳までロシアで過ごされ、日本にもどってからは進駐軍の電話交換手として生計をたてられていたようです。その後米国に留学し、英語の最大公約数という考え方に至りました。そして帰国後、日本人が学校で習う「日本英語」というものへの違和感もあり、自身で英語塾を行うことを決意します。その英語塾での思考と実践の記録、それがこの本の肝要といえます。

英語教育はいつから始めるべき?

さて、英語教育ですが自分の子供にいつころから行わせるのがよいのでしょうか?
この本の著者は、「小学校高学年」というラインを持っているように思えます。

それは、言語の習得に必要なのは「情緒的な安定」であると考えているからです。どういうことかというと、自分の母国語に対しての認識と自信もないまま、英語と日本の決定的な思考や感覚の差を知らないまま英語学習を始めても、「単純に日本語を英語に置き換えるという作業にしかならないから」といえます。

本の中では何度も繰り返し、「独り立ちのできる英語」ということが述べられますが、その条件としては「きちんとした発音があってネイティブと対等なフィールドで話せること」「考えや感情を伝えるための思考能力を持っていること」が必ずあげられていました。著者は言語を教育する過程で、「教えてもしゃべれないのは、まだ考えることができない子どもだから」という結論に至ったようです。

幼児英語教育について

この本の中で言われているのは、「生きていく環境に合わせた言語が必要」ということです。そして特に子どもにとって、生きていく環境が成長に伴って変わっていく、このことが重要なのではないかと思います。

例えば多くの子どもは、絵本などの静的なコンテンツから、徐々に動的なコンテンツに興味を持っていく時間が増えますから、本で学ぶ言語よりも実際の遊びで使う言語が記憶や思い出と結びつきます。また、親がどれだけ頑張って家庭内に別の言語を学ぶ環境をつくったとしても、子どもにとって大切な関係性は、これもまた次第に、親から友達へと移っていきます。そうすると仲間との共通言語、それこそがその子どもの興味の対象となっていくのです。

著者はそのような経緯から、幼児の段階から英語を熱心に教育することに賛成できないようです。特に、日本に住んでいて日本語しか話さない友人と過ごすためには、まず日本語をしっかりと運用できるようにするべきと考えているようです。親ががんばって英語を勉強する環境を作ったとしても、その英語は言語として、つまり生きた言葉として子どもの思考や思い出のもとにはならないのではないか、そう考えているようです。

最後に

英語と聞いてワクワクする人もいれば、嫌な気分になる人もいるでしょう。それは置き換え英語を詰め込み式で学ばされ、点数評価されてきたことの結果といえるかもしれません。

しかしおそらくこのブログ読者の多くの方は、今は誰かに何かを伝えていく立場にある人が多いと思います。お子さんがいる方は、いずれ子どもから「なぜ英語を勉強するのか?」と聞かれたときに、英語嫌いだったなぁ・・・という体験をどのように消化して伝えるか、という思考実験も面白いのではないでしょうか?

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