なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか

社内で話題になっていたこの本、『なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか』をやっと読むことができました。メインターゲットはビジネスパーソンと思われる書籍ですが、会社だけでなく家庭にも持ち込めるヒントもある良い本でした。

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ポイントは3つ:
1. グローバル人材とは?
2. なぜうまくいかない企業が多いのか?
3. 世界で求められる能力

本編に入る前に著者のご紹介を。
著者はフランス人のドミニク・テュルパンさん、現在IMDの学長に就いている方です。
IMDというのはスイスにあるビジネススクールの名称です。日本でも有名なグローバル企業でもあるネスレ社など多くの大企業を顧客に持ち、まさに企業のグローバル化戦線の前線にいる人が「グローバル化」をどのようにみているのか、とても興味深く読むことができました。

1. グローバル企業が求めるグローバル人材とは?

常にオープンで何事にも好奇心の扉を開き、新しい物事に共感できる人、これがグローバル人材の定義だと考えているようです。

言葉の定義自体はわかりやすくシンプルですが、日本企業にはなかなかいない人材であるとも言えそうです。そしてそのために、本のタイトルとおり日本企業がグローバル化につまずいているという見方ができます。

ではなぜそのような人材が日本企業には少ないのでしょうか?
それは下記の表の3つ目のステップにある、と考えることができそうです。

2. なぜうまくいかない企業が多いのか?

企業のグローバル展開化のステージ:

<1st stage>
自国で事業を興す。国内に焦点をおいた市場獲得を目指す段階

<2nd stage>
国内での成功を地盤に海外へ。標準化と増産による規模のメリットで拡大段階

<3rd stage>
自国と海外の多地域で事業展開。顧客のニーズを満たすため、ローカル展開が求められる段階

<4th stage>
国境なきグローバル化へ。グローバル視点での標準化とローカル化を判断して経営を行っていく段階

上記は企業のグローバル展開の一例です。

日本企業がつまずきやすいポイントとして3つ目の「海外地域向けのローカル化」があげられており、その理由として「海外支社の日本人幹部が、現地のホワイトカラーをマネジメントする能力が低い」という点が挙げられています。

また、上述のマネジメント能力にもつながりますが、日本企業の体質による「社員教育の遅れ」についても手厳しい分析がされています。それは、海外展開を重要な戦略と位置付けているものの、「採用や研修では海外経験や海外での学びに対する評価が低い」こと、そのため「海外での事業を正当に評価する雰囲気が育っていない」という指摘に表れています。

3. 世界で求められる能力

グローバルで勝負するには、「勝負する土俵」「勝負するマネジメント力」が必要である、というのがポイントであるといえます。そしてこれらが、これまでの日本企業のグローバル化を阻害している大きな要因のキーワードともいえそうです。

とはいえ、海外在住の人であれば誰しも、グローバル化できている(適応しやすい)というわけはありません。そのような人材を育てていく必要性を感じ、実行できる仕組みを作り、それを動かしていく、このような「教育プログラム」を持っているかどうかが違いの1つといえそうです。

本の中で紹介されていた、グローバル人材向け企業プログラムを少し紹介したいと思います。

●ネスレ
若いうちから世界各国の拠点への異動配置を実践。
特に、幹部向け教育プログラムの作成などキャリアパスにあわせた教育プログラムを開発して人材教育するという熱心な姿勢。著者の運営するIMDと連携したプログラムもあり、座学と実践の中で学び、育つ環境の提供を社員に向けて積極的に行っている。

●GE
企業内大学「クロントンビル」が有名。ネスレ同様世界中のGEグループから幹部候補生が送り込まれる大学である。特に、「ゼロから事業を作る起業家」よりも「社内の資産を活用してよりよいものを作り上げていく、業種横断的に新しい仕組みを開発していくことができる人」を育てていくことに力を入れたプログラム。

●花王
拠点や部署を超えたチームが発足し、経営課題についての改善策をまとめる提言を行う教育プログラム。本格化させている海外展開を促進する人材育成の一環として2010年より導入している。ポイントは日本人幹部候補向けのプログラムを、世界の拠点で活躍できるリーダー向けに全面刷新している点にある。

●住友商事
各国で採用している外国人を積極的にマネジメントする能力を身につけらせる教育プログラム。特に指示ではなくマネジメントとしての対話力を教育するという観点から、コミュニケーション支援のプログラムに力を入れているということ。

最後に
CURIO Japanでも、「自らの好奇心を育て伸ばしていくことができる人」をグローバル人材の定義の1つとして考えています。今回、国際的に活躍しているビジネススクールの学長の考え方と共通していたということは、自分たちの考えが間違っていなかったという一つの安心感を持てました。と同時に、「好奇心を持ち続ける人を育てる」ことに対しての困難さが、より生々しく迫ってきたという印象を持ちます。

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